ケモインフォマティクスで便利なフリーソフトウェア
化学系の方ですとパソコンで行う作業はWordで文章を書き、Excelで図を作り、PowerPointで発表資料を作るだけという方も少なくないのではないでしょうか。しかし近年、ビッグデータやIoTなどの言葉が巷に溢れ、データ分析を始めてみたいという方も多いと思います。本記事では、データ分析を始める化学系の方にとって便利なフリーソフトウェアを紹介します。
目次
Marvin Sketch
Marvin Sketchは、非商用目的なら無料で利用できる化学構造描写ソフトウェアです。簡単なマウス操作で化学構造を描写することができ、構造をmolやsdf, cdxなどの化学でよく用いられるファイル形式や、pngやjpegなどの画像データとして保存することが出来ます。自分が調べたい化学構造について描写し、mol形式などで保存することでRDKit1による解析もできます。
Marvin SketchはChemAxon2に登録後、こちら3からダウンロード出来ます。 Marvin Sketchを起動するとウィンドウが立ち上がります。左側ツールバーの上から2番目のボタンを選び、マウスでドラッグすることで炭素結合の直鎖を描けます。
また、よく使われる環構造は下側にボタンが用意されているため、ボタンひとつで描けます。
次にベンゼン環に側鎖をつけて、一部の原子を炭素以外に変えます。原子の種類は右側のツールバーから選択、あるいは右側ツールバーの一番上のボタンを押すと周期表が出てきますので原子を選択し、変えたい原子をクリックします。
また、結合次数を変えたい場合は左のボタン群の一番上のボタンを押したのち、次数を変えたい結合上でクリックします。
以上のような操作で安息香酸が描写出来ました。
また、化学構造を描いているうちに見た目や原子間の距離などがおかしくなってしまった場合は、上のツールバーの”clean2D”ボタン(またはショートカットキー:ctrl+2)を押すと整った構造になります。
調整前
調整後
化学構造の一部分だけを直したい場合は、直したい部分を選択後にclean2Dを行います。
調整前
調整後
操作は直感的で分かりやすいので、実際に使ってみるとすぐに理解できると思います。 皆さん試してみてください。
Open Babel
Open Babelは化学構造のフォーマットを変換できるツールです。Open Babelはこちら4からダウンロードできます。例えば分子を文字列で記述する記法のひとつであるsmiles形式で書かれたデータを別の形式であるsdf形式に一括で変換出来ます。 Open BabelのGUIは画面が縦に3分割されており、
1.左側で変換したい元のファイルや構造式を入力する、
2.右側で変換後の出力ファイルを設定する、
3.中央上部のCONVERTを押す。
の順で操作することで簡単にファイル形式を変換できます。中央のオプションは主に変換後のファイルの内容を変更するオプションですが、基本的には手を加えなくて大丈夫です。
上の図は、ニコチン酸とニコチンのsmilesをsdf形式に変換した際のOpen BabelのGUIです。変換後のsdfファイル(下図)を開いてみると、ファイルが正しく変換されていることがわかります。
基本的なフォーマットの変換などもPythonの分子を扱うライブラリであるRDKitによりできるため、Open Babelに関しては以上の簡単な紹介のみとさせていただきます。
まとめ
本項では構造描写ソフトのMarvin Sketchとファイル変換ソフトのOpen Babelの紹介をさせていただきました。今回紹介したソフトはマウスで直感的に操作できるため、初めての方でも簡単に利用できると思います。ぜひご活用ください。
(文責: @ysugachem)